インフルエンザのワクチンと言ったら、二の腕に注射するタイプのものを多くの人が思い浮かべると思います。
しかし、世の中には鼻の穴の中にスプレーするタイプのワクチンがあるのをご存じでしょうか?
FluMist という名前の薬で、鼻にスプレーするタイプのインフルエンザワクチン
※これは日本未発売の薬なので、海外から病院が輸入して使用します。
引用:https://www.flumistquadrivalent.com/nasal-spray-flu-vaccine/how-does-it-work.html#
この薬のメリットは何と言っても、針で注射しないので、痛くありませんのでお子様などに重宝され、日本の小児科の病院・クリニックで輸入して使用しています。
ただし、デメリットがかなりあるので、この薬を選ぶときは注意してください。
ここではデメリットを中心に説明します。(というかメリットは針で刺さないから痛くないというメリットしかありません)
デメリットの説明を読んで、それでも使いたいという人は「FluMist 病院」などのキーワードで検索すれば輸入しているFluMistを扱っている病院・クリニックが検索結果に出てきます。
目次・・・
インフルエンザの鼻ワクチンのデメリットはこの4つ!
結論から言うと、インフルエンザの経鼻ワクチンのデメリットはこの4つです。
・鼻ワクチンは注射ワクチンよりも効果が弱い可能性がある
・輸入品のため副作用が起こっても国が保証してくれない
・通常のワクチンよりも副作用が多く(鼻や喉辺りの副作用が特に多い)
・値段が注射のワクチンの倍以上する
これらを一つずつ詳しく説明していきます。
鼻ワクチンは注射ワクチンよりも効果が弱い可能性がある
論文などを読むと、鼻ワクチンは注射のワクチンよりも強力なインフルエンザ予防効果がある可能性があるといった内容のことが書いてあります。
しかし、これはあくまで理論的には強力そうだっていう推論を脱していません。
というか、どちらかというと鼻ワクチンの方が弱い可能性があります。
米国CDCは2016年6月に効果が低いとして推奨を取り止めたという経緯があります。
※その後、2018年2月には推奨を再開している。
輸入品のため副作用が起こっても国が保証してくれない
あまり知られていませんが、日本で承認されたワクチンを接種した場合、なにか副作用が起こっても、国が治療にかかるお金をカバーしてくれるなどの救済措置があります。
それが、予防接種健康被害救済制度というものです。
ですが、この救済措置は「日本で承認されたワクチン」を使用した場合というのが対象となり、海外から輸入したワクチンは病院で打ってもらったとしても救済の対象外となります。
通常のワクチンよりも副作用が多く(鼻や喉辺りの副作用が特に多い)
通常のインフルエンザ注射ワクチンと経鼻ワクチンの代表的な副作用を表にしてみました。
副作用 | インフルエンザ注射用ワクチン | インフルエンザ経鼻ワクチン |
鼻漏 | 7.0% | 44%(大人) 58%(子供) |
頭痛 | 12% | 40%(大人) 4-9%(子供) |
疲労感 | 17% | 26% |
咽頭痛 | ほぼなし | 28%(大人) 5-11%(子供) |
筋肉痛 | ほぼなし | 17% |
鼻づまり | ほぼなし | 58% |
中耳炎 | ほぼなし | 3% |
蓄膿症 | ほぼなし | 4% |
見てもらうとわかるように、頭痛や鼻漏や疲労感はどちらのワクチンでも一定以上発生しますが、経鼻ワクチンの方が副作用が起こりやすいのがわかります。
さらに、経鼻ワクチンに特有の副作用(咽頭痛・鼻づまり・中耳炎など)もかなりの確率で起こることがわかります。
ワクチンを鼻に直接噴霧するのは危険!
鼻の奥(鼻腔)には、においを感知する嗅神経が露出している状態です。
そこにワクチンを投与するということは、鼻の神経に直接的に菌がくっつくことを意味します。
イメージしたたけでも、ちょっと怖いなって思うのは私だけでしょうか?
現に、スイスでNasalFlu(Berna社)というインフルエンザの鼻ワクチンが販売されたのですがベル麻痺という顔面麻痺が頻発したため1年で販売が中止されたこともあります。
※鼻には嗅覚神経が露出しており、そこに直接薬が作用するため(NasalFluは薬の添加物に大腸菌の毒素を配合していたため、その毒素が神経に作用したと論文では考察されている)
このような事例もありますので、慎重に判断することをおすすめします。
値段が注射のワクチンの倍以上する
通常の注射のインフルエンザワクチンは大体1回3千円-4千円くらいで設定されていることが多いと思います。
一方、インフルエンザ鼻ワクチンはというと、輸入コストがかかるので割高となります。
インフルエンザ経鼻ワクチンは大体8千円前後で設定されているクリニックが多いようです。
インフルエンザ経鼻ワクチンのデメリットも多いのですが、もうすぐこれらのデメリットがなくなる可能性あり
実は、日本で開発されたインフルエンザ経鼻ワクチンが承認申請がされています。
日本産のインフルエンザ経鼻ワクチンが近い将来販売される予定!
カナダやアメリカではFluINsure(カナダ ID Biomedical)、Gelvac(アメリカ DelSite Biotechonologies)というのが、インフルエンザ経鼻不活化ワクチンが開発中ですが、日本でもオリジナルのワクチンが開発されており、2019/11に臨床試験が終了し、厚労省へ承認の申請がされました。
鼻にスプレーするだけで、インフルエンザの感染を防ぐ国産の経鼻ワクチンを大阪府吹田市の阪大微生物病研究会が16日までに開発した。人に予防接種して安全性と有効性を調べる治験が今年7月に終わり、近く国へ承認申請する方針。従来の注射に比べて高い効果が期待できるという。
これまでに挙げたデメリットは「輸入品」であるため副作用の保証が受けられないことや価格が高いという話でしたが、日本産のインフルエンザワクチンが承認されれば、副作用が出ても国の保証対象になりますし、価格も注射ワクチンと揃えてくると予想されます。
※ただし、副作用の出やすさという点では、日本で承認されたものでもなんとも言えないので、少し使用するのは様子を見ることをおすすめします。
ただし、この日本で開発された経鼻ワクチンは承認申請がされたばかりですので、実際に販売されるのは何年の先の話となります。
ですので、現時点でインフルエンザ鼻ワクチンで予防接種をしたいなら、上記のデメリットを考慮した上で決めるようにしましょう。
インフルエンザの予防にはワクチンを接種するのも有効な手段ですが、それ以外にも日常生活で気をつければかなりインフルエンザにかかりにくくすることができます。
どのような方法が有効であるか、また実は間違っている予防法などをこちらにまとめていますので参考にしてみてください。