「ステルイズ水性懸濁筋注240万単位シリンジ」 概要・作用機序・類似薬・比較臨床試験

ステルイズについての薬の概要・作用機序・類似薬・比較試験を専門薬剤師が監修して解説

ステルイズという梅毒の治療薬が販売されましたので、要点をまとめていきたいと思います。

薬剤の概要をざっくり解説
・効能効果「梅毒(神経梅毒を除く)」
・ベンジルペニシリンを有効成分とした梅毒治療薬で世界的には広く使用されている(梅毒治療の第一選択とされており、欧米等では約 70 年間にわたり使用されている)
・溶解性が極めて低く、投与部位から緩徐に放出される特徴を有し、1 回の筋肉内投与で有効濃度が持続することが可能な製剤である。(早期梅毒に対して単回投与でOK)
・梅毒トレポネーマでの本薬に対する耐性菌の報告がないと言われている


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ステルイズの作用機序は?

細菌のペニシリン結合蛋白に結合し、細胞壁の合成を阻害して殺菌的に作用します。

ステルイズの類似薬は?

ペニシリン系で「梅毒」に適応を有する薬剤の一覧です。

内服内服内服・注射注射
商品名バイシリンGサワシリン・パセトシンビクシリンペニシリンGカリウム
成分ベンジルペニシリンベンザチンアモキシシリンアンピシリンベンジルペニシリンカリウム

ただし、あとでガイドラインを示しますが、この中で実質使えるのは、アモキシシリン(プロベネシドと併用)かペニシリンGくらいです。

既存の治療薬とステルイズとの比較

ステルイズがこれまでの梅毒治療薬とどう違うのかまとめていきます。

ガイドラインではどうなっているか?

成人での梅毒に対する薬物療法は海外ガイドラインをまとめるとこのようになっています。(参考:uptodate)

早期梅毒第一選択:ステルズ筋注 240万単位 1回
代替療法:
ビブラマイシン 100㎎ 1日2回 14日間(適応外)
セフトリアキソン 1-2g /日 10-14日間(適応外)
テトラサイクリン 500mg  1日4回 14日間(適応外)
アモキシシリン 3g +プロベネシド 500mg 1日2回 14日間
後期梅毒第一選択:ステルズ筋注 240万単位 週1回 3回
代替療法:
ビブラマイシン 100㎎ 1日2回 14日間(適応外)
セフトリアキソン 1-2g /日 10-14日間(適応外  )
神経梅毒第一選択薬:ペニシリンG 300-400万単位  4時間毎 10-14日間
代替療法:セフトリアキソン 2g /日 10-14日間(適応外  )

※ちなみに日本における梅毒治療ガイドラインとは推奨薬が異なりますので注意してください。

つまり、世界的に見ても神経梅毒を除いて、早期、後期梅毒にはステルイズが第一選択となっているという状況です。

ステルイズは妊婦へ安全に使用可能

ステルイズの添付文書には妊婦への投与は「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」と記載されていますが、

ステルイズは世界で昔から使用されており、「妊婦」へ使用しても安全であることが示されています。

さらに、海外の 診療ガイドラインでも「妊婦」を含む早期梅毒(早期潜伏梅毒を含む)、後期梅毒(後期潜伏梅毒を含む)についてステルイズ筋注製剤が第一選択薬と位置づけられています。(参考:2020 European Guideline on the Management of Syphilis

著者の感想

これまで早期・後期の梅毒治療は保険適用があるのは実質的に「ペニシリンG」か「アモキシシリン+プロベネシド」のみでした。

しかし、今回、優先順位が高いステルイズが登場したことで梅毒治療の幅が広がったわけです。

特に、早期梅毒で一回の投与および、後期梅毒で三回の投与で治療が完了するので、患者や医療者にとってメリットが大きいと考えられます。

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