ケレンディア錠20mgの概要・作用機序・類似薬・比較臨床試験の考察

ケレンディア錠20mgという薬剤が販売されましたが、この薬剤を深堀りしていきたいと思います。

薬剤の概要をざっくり解説
・効能効果「 2型糖尿病を合併する慢性腎臓病 (ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者を除く。)」
・CKDに用いる非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬で、アルドステロンなどによるMRの過剰な活性化を抑制し、腎臓・心血管障害の発症や進展抑制に寄与すると考えられる。※MRの過剰発現と活性化が様々な組織における炎症・線維化を引き起こすとされている
・ 慢性腎臓病に適応を有するMR拮抗薬としては本邦初の薬剤である(高血圧症や心不全に適応のものはある)
・ 本剤は高頻度(8.8%)で高カリウム血症の副作用が認められるため定期的にカリウムのモニターが必要な薬剤である。
・ 腎機能・カリウム値で投与量が変わるので注意が必要
・ 本剤の有効性は日本人の部分集団においては有効性が示されていない(「腎不全の発症」「心血管複合エンドポイント」の評価においてはハザード比が1を上回っており、当局の指示で添付文書において「日本人では本剤の腎不全への進展抑制効果が弱い可能性がある。」と追記された)
・ 本剤のSGLT2阻害剤併用例においては、プラセボと同等か効果が劣ることが示された薬剤である(当局の指示で添付文書において「臨床試験に組み入れられた患者の背景(原疾患、併用薬、腎機能、アルブミン尿等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること」と追記された)
・ 現時点で北米でのみ使用されているが、ガイドラインにおいて推奨はされていない。

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作用機序は?

ケレンディアとは「非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体(MR)拮抗薬」に分類され、腎保護作用が期待されます。

参考:バイエルホームページより

このようにMRの過剰活性化を抑えることで、腎臓(心臓にも効果ある?)の組織の線維化を抑えるのがこの薬剤の作用機序です。

ケレンディア錠の類似薬は?

MR拮抗薬というのは2種類ほどありますが、腎保護作用が適応として承認された薬剤はありません・

「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病」の適応を有するMR拮抗薬はケレンディアが初の薬剤

現在販売されているMR拮抗薬はこちらです。

商品名(成分名効能効果
セララ( エプレレノン)高血圧 慢性心不全
ミネブロ( エサキセレノン)高血圧

比較臨床試験

比較臨床試験の結果、全集団では有意差がありましたが、日本人の部分集団においては有効性が示されなかったようですし、「腎不全の発症」や「副次評価項目」ではむしろ悪化傾向があることがわかりました。

参考:FIDELIO-DKD試験より
 

また、SGLT2阻害薬を併用しているとケレンディアを併用しても腎障害の抑制効果がないことがわかりました。

SGLT2阻害薬の併用の有無での腎複合エンドポイントの発生割合

参考:FIDELIO-DKD試験より

これらの結果から下記のように添付文書に追記されました。

「臨床試験に組み入れられた患者の背景(原疾患、併用薬、腎機能、アルブミン尿等)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること」

糖尿病患者へはSGLT2阻害剤を使用することが多いので、このエビデンスは覚えていた方がいいです、

しかし、「uptodate]」を読みますと、

専門家によってはSGLT2阻害剤を使用している患者にケレンディアを追加することもある

との記載もありますので状況に応じて併用はあるようです(どのようかケースで使用が考慮されるかは未記載)

Some experts add a nonsteroidal selective mineralocorticoid receptor antagonist (MRA, specifically finerenone), where available, to SGLT2 therapy provided the patient has a serum potassium ≤4.8 mEq/L while taking an ACE inhibitor or ARB.

参照:uptodate

ガイドラインではどうなっているか?

ケレンディアは承認は世界30か国以上で承認されているが実際に使用されているのが北米でのみです。

また、アメリカの腎不全ガイドラインにおいては特に記載はなく、積極的に推奨されている薬剤ではないようです。

著者の感想

SGLT2阻害剤を使用している患者やMR阻害剤(セララやミネブロ)を使用している患者にケレンディアは上乗せ効果は証明されていないので注意が必要!

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