こんにちは!プロフィールにも書いていますが、私は医療薬学会が認定している「薬物療法専門薬剤師」と取得している大学病院勤務の薬剤師です。
「薬物療法専門薬剤師」は日本で40人ほどしか取得できていない最難関の認定制度です。(詳しくは医療薬学会のホームぺージを参考にしてください。)
私が薬剤師なり立ての頃にどのように勉強していいかわからず、先輩にいろいろ聞いたり、ネット情報を調べてよさそうな教材を買ったり、勉強会に参加したりしていました。
もちろんそれらの勉強は無駄ではありませんでしたが、今に思うと非効率であったり、根拠がよくわからず納得できないということがあり、もっとちゃんとした教材や勉強法ってないのか?
と悩んでいました。
そのころに買った本はほとんど捨ててしまったのですが、残っているものの一部はこんな感じです。
(棚にはもうちょっとあります。)
最終的に「薬物療法専門薬剤師」を取得することができるまでに至ったのは、これらの教材や勉強会ではなかったと今になって実感しています。
では、何を使って勉強していたかと言うと、「UptoDate」というウェブ上の教科書みたいなものだけです。
本当にこれだけしか勉強に使ってません。(厳密には90%くらいか?)
・「UpToDate」とはなんなのか?
・どのように使うのか?
を詳しく説明します。
監修薬剤師
✅ 日本で約50人しかいない最難関の指導薬剤師に最速で認定
✅ 医師からの薬の相談件数:年間約1,000件
✅ 当サイトで解説している市販薬の販売実績:2,700件以上
目次・・・
UpToDate(アップ・トゥ・デート)とは?
これは簡単に言うと「インターネット上で提供されている医療系の教科書」です。
本を買って勉強しても、いまいち情報が古かったり、調べる時に時間がかかったりで手間がかかって煩わしいくて、勉強もおろそかになりがちになるのはあるあるだと思います。
そういった点でやはりインターネット上の情報は検索も楽ですし、わからないところをコピー&ペーストで簡単にメモできますし色々便利です。
医師が医師のために作成した臨床支援ツールで、日常の診療で生じる疑問にすばやく答えることを目的としています。4,800名を超える専門医が執筆を担当し、エビデンスに基づいて作成された信頼性の高い臨床情報源です。その内容は、19種類の医学専門分野におよぶ 9,000 以上のトピックを網羅しているほか、画像、医療計算ツール、MEDLINEの抄録へのリンク、参照文献、薬剤データベースから構成されています。データ更新は年3回です。
https://www.wolterskluwer.com/en/solutions/uptodate/how-we-help?&redirect=true
専門薬剤師がおすすめするUpToDateの使い方は?
基本的な使い方ですが、ログインしますと、このようなシンプルな画面になりますので、自分の知りたい情報のキーワードを入力しましょう。
あとはgoogleのように調べたい検索ワードを入力するだけです(検索ワードは日本語でも大丈夫ですが、検索結果はすべて英語となります)。
UpToDateの使い方の実例1(臨床的疑問の解決)
例えば
「メソトレキセート大量療法において、投与時にてんかん発作が副作用でるため、抗てんかん薬を予防的に使用したいと考えているが何を使用したらよいか?」
といった臨床的な疑問があった場合は添付文書やインタビューフォームを読んでも答えは出てきません。
脳神経学的な教科書に載っているかもしれませんが、どこに書いてあるかもすぐにはわかりません。
ですが、このuptodateで
「メソトレキセート」「副作用」
というキーワードで検索すると
といった情報を見つけることができます。
詳細情報を見ていくと
「薬剤に起因したてんかん発作に対して予防的に使用することは推奨されていないが、てんかんの既往があった場合は、患者に同意のもと使用してもよい」、といった内容が読み取れます。
このように、添付文書やインタビューフォームでは得られない情報をかなり迅速に得られるということがわかると思います。
UpToDateの使い方の実例2(相互作用の解決)
その他にも相互作用の検索をする際に、「UpToDate」は添付文書やインタビューフォームで得られる情報以上の最新情報を入手できます。
例えば、
「メソトレキセートとイーケプラは相互作用があるか?」
という疑問に対して、添付文書やインタビューフォームで検索しても
「相互作用なし」
となります。
しかし、uptodateの相互作用検索機能を使用すると「併用注意」との結果がでます。
メソトレキセートとレベチラセタムを併用する場合は、メソトレキセートの血中濃度の上昇が懸念されますので血中濃度のモニターが推奨されます。
UpToDateはいくらかかるの?料金は?
このような有益な情報をタイムリーに入手できるわけですので無料ではありません。
ではいくらなのかというと、
個人利用の場合は、1年間で519ドルですので、日本円で5万以上です。少し高いですが、1日当たり200円弱と考えると安いような気もします。
また、これを契約すれば、他の書籍などは一切不要ですので、これ一つでいいと考えれば安いです。
まとめ
若手の薬剤師でなにを使って勉強したらいいかというと「UpToDate」の一択です。
これは薬物療法専門薬剤師の私が自信をもっておすすめしますし、自分が薬剤師なり立ての頃に知りたかったなーと思っています。
最後に若手の薬剤師の先生に知ってほしいのは「情報」は「患者の生命」に直結しているこということが論文で証明されているということです。
医療情報の情報量が患者に与える影響を調査した結果ですが、
ハーバード大学の研究者による2011 年の研究(Hospital Medicine 誌に掲載)
・死亡率の低下- 3 年間で11,500 人を救命
・入院日数の短縮-年間372,500 日短縮
・医療の質の向上- Hospital Quality Alliance が定めるすべての項目が改善
参考:Isaac T, Zheng J, Jha A. Use of UpToDate and outcomes in US hospitals. J Hosp Med 2012; 7:85.
とのデータがあります。
これから多くの薬剤師の先生が研鑽を積んで、成長されることを心より願っております。