【エパデールEM】概要・作用機序・類似薬・比較臨床試験 【専門薬剤師監修】

エパデールについての薬の概要・作用機序・類似薬・比較試験を専門薬剤師が監修して解説

エパデールEMカプセルが2022年8月に販売されましたので要点をまとめてみました。

エパデールEMカプセルの概要をざっくり解説
1. エパデールEMカプセルは世界初の 1 日 1 回で高用量の4gの投与が可能な高純度 EPA 製剤である。(従来のEPA製剤は「1 回 900mg を 1 日 2 回又は 1 回 600mg を 1 日 3 回」)
  2. 本剤は4g/日まで可能(従来のEPA製剤の最高用量は2.7g/日) 
3. TGを下げる効果も、従来EPAと比べて有意に高い効果があることが示された。
4. エパデールEM 4g/日 の投与で心血管イベントの抑制が示されている(従来品や類似薬「ロトリガ」で示されていない)


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エパデールEMカプセルと類似薬との違いは?

商品名エパデールEMカプセルイコサペント酸エチル粒状カプセル900mg(後発品)オメガ-3 脂肪酸エチル粒状カプセル 2g(後発品)
成分(1包中の含量)イコサペント酸エチル
:2000㎎
イコサペント酸エチル
:900㎎
オメガ-3脂肪酸エチル
(イコサペント酸エチル:930㎎
ドコサヘキサエン酸エチル:730㎎)
効能高脂血症・閉塞性動脈硬化症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善
・高脂血症
高脂血症
用量1回2gを1日1回
(最大1回4g、1日1回まで増量)
1回900mgを1日2回
(最大1日3回まで増量可)
1回2gを1日1回
(最大1日2回まで増量可)
薬価(1日量換算)113.0(113.0-226.0)34.30(68.6-102.9)98.20(98.20-196.4)
経管投与の可否懸濁状態⇒10分で崩壊するが、カプセルの残渣あり通過性⇒◯(8Fr)(メーカー社内資料より)懸濁状態⇒10分で崩壊するが、カプセル剤皮がシリンジに付着通過性⇒剤皮がシリンジに付着懸濁状態⇒5分で崩壊するが溶け残りがあり通過性⇒◯
血管イベント発症抑制効果はあるか?◯ 心血管イベントを25%抑制( REDUCE-IT試験:RCT)1日1回4gの投与◯ 冠動脈イベント累積発症率は、EPA群で53%の低下(JELIS試験:非盲検試験)1回900㎎ 1日2回✕ (STRENGTH試験)1日4g 1日1回

エパデールEM化カプセルの作用機序は?

EPAはn-3系不飽和脂肪酸の内の一つで、抗炎症作用抗血小板作用があると言われております。

エパデールEM製剤の臨床試験でわかっていることは?

エパデール製剤はEPAという魚から抽出した成分で昔から知られた成分ではありますが、エパデールEMカプセルに関して臨床試験で証明されていることがいくつかあります。

・TGを下げるが強い

EPA製剤はTGを減らすことがわかっていましたが、エパデールEMカプセルは高用量(4g/日)での投与が承認されており、TGを下げる効果は用量依存的に強くなることがわかっています。


エパデールと似たような製剤でロトリガというのがありますが、従来のエパデール(1.8g/日)と非劣勢だったことを考慮すると、TGを下げる効果はこうなります
※ロトリガカプセル2g(オメガ-3脂肪酸エチル:イコサペント酸エチル:930㎎、ドコサヘキサエン酸エチル:730)

エパデールEMカプセル >エパデール(従来品)=ロトリガカプセル

・心血管イベントの抑制効果が証明されている

EPA製剤は血管イベントハイリスク+高TG血症患者の血管イベント発症抑制にスタチンへの上乗せ効果があることが証明されています。

トリグリセリド値の高い患者において、1日4gのイコサペント酸エチルは、プラセボと比較して心血管死を20%、MIを31%、脳卒中を28%、そして、主要評価項目の心血管イベントを25%抑制した。

REDUCE-IT試験:RCT)

一方で、オメガ-3脂肪酸エチル(イコサペント酸エチルおよびドコサヘキサエン酸エチル)を用いた大規模臨床試験では心血管イベント抑制効果を証明できなかった。(STRENGTH試験

・EPA製剤のガイドラインでの扱いは?

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版において、EPA製剤は血管イベントハイリスク患者で高TG血症を合併する場合の血管イベント発症抑制に有効であることからスタチンとの併用療法が推奨レベルAで推奨されている(REDUCE-IT試験:EPA 4g/日とプラセボ比較試験結果より)

EPA製剤のスタチンへの追加併用療法は、高TG血症を合併する場合の動脈硬化性疾患発症抑制に有効であり、併用を推奨する(エビデンスレベル1+ 推奨レベルA)

動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版

エパデールEMカプセルの簡易懸濁での投与の可否

試験方法:1包分のカプセルをシリンジに入れ、55℃のお湯20mLを加え、10分放置し、15往復横転して攪拌。

通過性:8Frの経鼻チューブに通過させたが、詰まりは発生しなかった。

フラッシング後の状態:カプセル被膜の残存。

備考:ポリスチレン製の器具の溶解に注意

著者の感想

「エパデール」と「ロトリガ」を比較した場合、TGを下げる効果は「ロトリガ」より「エパデールEM」のほうが強いです。また、心血管イベントの予防にも「ロトリガ」では証明されず「エパデール」においてのみエビデンスがあることから、TGが高くCVDリスクが高い患者には「エパデール」のほうがよいと思われます

ただし、既存の製剤の方が納入価が安い場合もありますので、薬価を考慮し選択する必要があると思います。医薬品の薬剤コストの計算や考え方については別の記事で詳しく解説しています。

参考:薬剤の切り替えによる薬価差益を考慮した薬剤費の試算方法

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