2019.4.12に神奈川県保険医協会 政策部が発表した、「オンライン診療 実態調査」を読み解くと、オンライン診療が進まないのは保険適応の範囲が問題であることが浮き彫りとなりました。
この記事のアンケート結果はこちらから引用しています: http://www.hoken-i.co.jp/outline/h/2019412.html
目次・・・
まず、現状としてオンライン診療がどのくらい利用されているか?
オンライン診療料等算定患者数(月)は、 「0人」が53.7%( 153名)、と 5割強を占め、「1人」が14.7%(42 名)、「2人」が7.0%(20 名) 、「 4人以上」が6.3%(18 名)と、僅少であった。「4人以上」は 最大で 22 人となっている。これら算定患者が「いる」医療機関でみると約半数(46.2%:42 名)は 「1人」であり、平均患者数は2.96 人で、中央値は2.00人となっている
つまり、保険診療でのオンライン診療がまったく浸透していない実態があるようです。
なぜオンライン診療は浸透しないのか?
オンライン診療が2018年4月より保険適応となり、約1年が経過しましたが、なぜオンライン診療が浸透しないか、全国の医療機関にアンケートをとった結果以下のような回答となりました。
「保険診療の対象を広げてほしい」47.4%( 135 名)、「オンライン診療に適する患者が少ない」が34.7%(99 名)、「対面診療の補完として行うべき」 29.1%(83 名)、「オンライン診療への患者の要望が少ない」26.0%(74 名)、「オンライン診療のシス テム導入の費用が高い」24.9%(71 名)、「対面診療の補完でなくても構わない」24.9%(71 名)、「対 面診療に比して十分な診療ができない」10.2%(29 名)となっている。ただ、「対象疾病拡大」に関し、具体的な疾病記載は自由意見欄も含め僅少となっている。
様々な意見がありますが、最も多い意見としては、保険適応の範囲が狭いことから、疾患とマッチせず病院側も患者側もオンライン診療を利用できないという現状があるようです。
どうして国は保険適応の範囲を限定するのか?
なぜ国は慢性疾患など病気にオンライン診療の保険適応を限定的にしているかというと、現場の意見を反映させ、誤診などの安全面を危惧しているからです。
医療現場の意見はどのようなものがあるか、アンケート結果から内容を見てみましょう。
1つずつ見ていきますが、実は「疾患の限定」はとても無意味なことであることがわかります。
「精神療法は対面で行うもの」(精神科)
「小児科では無理がある」(小児科)
「耳鼻科は局所所見 を診る必要があり不要」(耳鼻科)
この意見どう思いますか?
オンライン診療がマッチする疾患や逆に不向きな疾患というのは確かにあります。これは耳鼻科や精神科や小児科はオンライン診療は向かないという意見ですが、本当にそうなのでしょうか?
このアンケートはオンライン診療を実施していない医療機関からの結果ですので固定概念にとらわれすぎている一部の方の意見であるように思います。いくつかの論文では精神科や小児科・耳鼻科領域でもオンライン診療が有用であったとの報告は多数挙がっています。
さらに精神科領域では、オンライン診療する上での手引書の策定されています。
結局は医師の力量の問題であってルールで規制するものではないと思います。
「誤診が増えるだけ」(内科)
「医療訴訟が多くなると思う」(内科)
「診察してわかることが多く、視診、問診での判断に疑問。利便性だけ追及してよいのか」(内科)
疾患毎にオンライン診療がなじまないと判断したら対面で行えばいいだけの話ですので、これもルールで縛る類のものではありません。医師の力量の問題です。
「業者のDM、FAX に儲け主義がみえ不信感からいいイメージない」(耳鼻咽喉科)
「業者がかかわることは反対。業者を介さないシステムなら考える」(内科)
「コスト面で全く見合わない」(精神科)
オンライン診療を行う場合、必ず業者を介さなければならないわけではありません。
テレビ電話も無料通話アプリを利用して行っている医療機関もありますので、コストが言い訳にオンライン診療を行わないのは、患者中心の医療を置き去りにした考えになってしまいます。
つまり、なにを優先すべきかという医師のモラルの問題に他ならず、これも規制を厳しくする理由とはなりません。
「業者と悪質な医師が金儲けのアイテムに悪用し終わる」(精神科)
「算定要件が守られていないのは不安」(内科)
便利な道具も使用する人によっては有害になものになるのはなんでもそうです。オンライン診療も悪質な医師が利用すればどのように法規制を行っても悪質な方法で金儲けを行うでしょう。
現に、オンライン診療は初診は対面が原則となっていますが、守らない医療機関が散見されます。「このような輩がいるから、便利なものとわかっているけど、なかったことにしましょう」とするのではなく、このような悪徳な医師を処罰することに注力してくれればいいのではないでしょうか?
オンライン診療の規制を厳しく理由にはならないと思います。
「診察なしの医師にはなりたくない」(整形外科)
このように志の高い医師がほとんどであると思います。ですが医師すべてはこのように高尚な方ばかりではなく、一部の医師はそうではないのが現実です。
例えば医師法で禁止されている無診察治療を行っている医師もいます。つまり法律で禁止しても「やる奴はやる」のです。
(医師法 第20条)
(5) 無診察治療等の禁止(第 20 条) 医師は、自ら診察しないで治療をし、もしくは診断書もしくは処方せんを交付しては ならない。
このような医師に対して、規制しても無意味で、オンライン診療に関しても同じことではないでしょうか?むしろこのような医師をしっかりと取り締まってほしいです。
まとめ
このように、医療機関側がオンライン診療を不安視している事柄の多くは、ルールで規制してもしょうがないことばかりなのです。ですが、診察を行う医師側のモラルや力量の問題が現実として存在することから、オンライン診療には多くのメリットがあるにも関わらず国はこれら現場の意見を元に規制を行ってしまっています。
ですが、本来はオンライン診療の対象疾患などを限定するのではなく、医師への指導や教育が必要であることがこのアンケート結果から浮彫となりました。