「 サムタス点滴静注用8mg・16mg」 概要・作用機序・類似薬・比較臨床試験

サムタスについての薬の概要・作用機序・類似薬・比較試験を専門薬剤師が監修して解説

サムタス点滴静注用という薬剤が2022年5月に販売されましたので、要点をまとめてみました。

「サムタス」の概要をざっくり解説
・効能効果「 ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留]
・本剤は、内服薬「サムスカ」と同成分の注射剤である。
・バソプレシンV2受容体拮抗作用により腎集合管でのバソプレシンによる水の再吸収を阻害することで電解質排泄の増加を伴わず、選択的に水を排泄する利尿作用を示す。
・本剤は静脈内投与を可能としたプロドラッグ製剤で内用剤が困難な患者さんへの新たな治療の選択肢をなり得る
・適応症は「ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な【心不全】における体液貯留」にのみ

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サムタスの作用機序は?

バソプレシンV2受容体拮抗作用により腎集合管でのバソプレシンによる水の再吸収を阻害することで電解質排泄の増加を伴わず、選択的に水を排泄する利尿作用を示す。

類似薬は?

同じ作用機序を持つ薬剤はありません。

しかし、同成分の内服薬は販売されています。

サムタスは「心不全における体液貯留」にのみ適応を有していることに注意してください。

適応症サムタス点滴静注トルバプタンOD錠7.5㎎(後発品)サムスカ顆粒1%
サムスカOD錠7.5mg
サムスカOD錠15mgサムスカOD錠30mg
心不全における体液貯留
肝硬変における体液貯留
SIADHにおける低ナトリウム血症
常染色体優性多発性のう胞腎

内服薬と注射薬との換算は?

今、内服のサムスカを使用していて注射薬のサムタスに変えるという場合もあるかと思います。

その場合、用量はどのように換算するの?

と思うかもしれません。

臨床試験の成績から、力価換算の目安はこのようになります。

内服15mg/回 = 注射16mg/回

他の利尿薬を投与しても体液貯留が認められるうっ血性心不全患者294例を対象とした二重盲検比較試験において、本剤16mgを1日1回5日間静脈内投与、又はトルバプタン15mgを1日1回5日間経口投与した。主要評価項目である最終投与時の体重のベースラインからの変化量において、本剤群のトルバプタン群に対する非劣性が検証された(非劣性マージン:0.48、表17-1)。体重減少は投与開始翌日より認められ、投与期間を通して継続した

<国内第Ⅲ相試験>

内服薬の「サムスカ」は経管投与が可能なので注射薬の出番はそう多くない?

サムタスと同成分の「サムスカ」は経管投与が可能な薬剤です。

Nasogastric (NG) tube: Administration via NG tube resulted in an ~25% reduction in AUC and a modest reduction in Cmax in one study; 24-hour urine output was reduced by only 2.8%. Therefore, until further studies are done to determine a bioequivalent dose when administering via NG tube, NG tube administration of a crushed 15 mg tablet appears to be a viable alternative method of administration (McNeely 2012).

uptodateより

日本服薬支援研究会より

そのため、内服できない = 注射剤 と必ずなるわけではないですし、対象疾患も少ないため出番は限定的かもしれません。

サムタスは相互作用が多いので注意!

サムタスは、「CYP3A4によって代謝」+「P糖蛋白の基質」+「P糖蛋白への阻害作用」 という代謝に様々な影響を与えます。その結果、多くの薬剤を併用注意となっています。

薬剤名等臨床症状・措置方法機序・危険因子
CYP3A4阻害作用を有する薬剤
ケトコナゾール(経口剤:国内未発売)、イトラコナゾール、フルコナゾール、クラリスロマイシン等
グレープフルーツジュース
[7.4、16.7.1-16.7.3参照]
代謝酵素の阻害により、トルバプタンの作用が増強するおそれがあるので、これらの薬剤との併用は避けることが望ましい。トルバプタンの代謝酵素であるCYP3A4を阻害し、トルバプタンの血漿中濃度を上昇させる。
CYP3A4誘導作用を有する薬剤
リファンピシン等
セイヨウオトギリソウ(St.John’s Wort、セントジョーンズワート)含有食品
[16.7.4参照]
代謝酵素の誘導により、トルバプタンの作用が減弱するおそれがあるので、本剤投与時はこれらの薬剤及び食品を摂取しないことが望ましい。トルバプタンの代謝酵素であるCYP3A4を誘導し、トルバプタンの血漿中濃度を低下させる。
ジゴキシン
[16.7.5参照]
トルバプタンによりジゴキシンの作用が増強されるおそれがある。トルバプタンはP糖蛋白を阻害し、ジゴキシンの血漿中濃度を上昇させる。
P糖蛋白阻害作用を有する薬剤
シクロスポリン等
トルバプタンの作用が増強するおそれがある。これらの薬剤がP糖蛋白を阻害することにより、トルバプタンの排出が抑制されるため血漿中濃度が上昇するおそれがある。
カリウム製剤
カリウム保持性利尿薬

スピロノラクトン、トリアムテレン等
抗アルドステロン薬
エプレレノン等
アンジオテンシン変換酵素阻害薬
エナラプリルマレイン酸塩等
アンジオテンシンII受容体拮抗薬
ロサルタンカリウム等
レニン阻害薬
アリスキレンフマル酸塩等
これらの薬剤と併用する場合、血清カリウム濃度が上昇するおそれがある。本剤の水利尿作用により循環血漿量の減少を来し、相対的に血清カリウム濃度が上昇するおそれがある。
バソプレシン誘導体
デスモプレシン酢酸塩水和物等
本剤によりバソプレシン誘導体の止血作用が減弱するおそれがある。トルバプタンのバソプレシンV2-受容体拮抗作用により、血管内皮細胞からのvon Willebrand因子の放出が抑制されるおそれがある。

サムタスの配合変化はどうなっているか?

サムタスの配合変化は添付文書にはこのように記載されています。

本剤を他剤と配合した時に、本剤と配合変化(混濁、浮遊物等)が認められる薬剤があるので、変色又は異物を認める場合は投与しないこと。また、配合変化試験データを参照すること。

サムタス点滴静注用添付文書

ここで「配合変化試験データ」とはメーカが提供している資料のことを指します。

これを確認すると、「エスラックス静注 50mg/5.0mL」「セレネース注 5mg」「アタラックス-P 注射液」「ネオシネジンコーワ注 1mg」「ミルリノン注 10mg「タカタ」」と配合直後に白濁するとのことです。

参考:【無料・登録不要】注射薬配合変化のデータベース

著者の感想

サムタスは同成分の「サムスカ」と比較したら、内服ほどの出番はないかなと思いました。

理由は
・適応症が「心不全における体液貯留」のみしかない
・内服薬は経管投与が可能な薬剤

また、既存の製剤の方が納入価が安い場合もありますので、薬価を考慮し選択する必要があると思います。医薬品の薬剤コストの計算や考え方については別の記事で詳しく解説しています。

参考:薬剤の切り替えによる薬価差益を考慮した薬剤費の試算方法


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