クービビック錠」 概要・作用機序・類似薬・比較臨床試験

クービビック錠の概要をざっくり解説
・ 本剤はデエビゴ、ベルソムラに続いて3剤目のオレキシン受容体拮抗剤として販売された不眠症治療薬である。
・ 本剤は持ち越し効果を最小限にするために他のオレキシン受容体拮抗薬(デエビゴ、ベルソムラ)よりも半減期が短く設計されているため次の日の眠気が軽減が期待されてはいるが、どちらもプラセボと差がなく安全性は同程度である
・ デエビゴとクービビックを比較すると安全面で持ち越し効果、転倒リスク、車の運転の影響、悪夢の発生頻度、睡眠構成の変化を比べたが、デエビゴとクービビックはそれぞれプラセボと差がなく違いは見出されていない

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オレキシン受容体拮抗とは?作用機序は?

脳内にオレキシン受容体(タイプ1及びタイプ2)があり、これらの受容体は覚醒に関与しています。
この受容体にオレキシン神経ペプチドの結合することで覚醒状態になりますが、不眠症はこの反応は過剰になっています。
オレキシンが受容体に結合することを阻害することで過剰な覚醒状態を抑えて睡眠を誘発すると考えられています。

オレキシン受容体拮抗薬の比較

オレキシン受容体拮抗は現在3種類(ベルソムラ、デエビゴ、クービビック)が販売されており、禁忌や半減期、製剤的な違いがありますのでかなり詳しく比較してみました。

 
医薬品名一般名販売規格用法成人の通常用量・半減期
・作用発現時間
禁忌粉砕・経管投与・一包化保管方法悪夢の発生頻度睡眠構築持ち越し効果転倒リスク車運転への影響
デエビゴレンボレキサント2.5㎎錠:¥52.1
5㎎錠:¥82.7
10mg錠:¥123.6
就寝直前 1日1回5㎎(効果不十分の場合10㎎まで増量可)T1/2=17-19h
onset=15-20分
重度の肝障害のある患者半錠「不可」:割線なし
粉砕「可」:3か月間安定
一包化「可」:無包装状態で12カ月安定
経管投与「可」:経管投与ハンドブックより
室温0.4-2.2%・レム睡眠の時間が長くなる傾向(20.92%-22.94%)※平均20-25%
・レム睡眠出現時間が早くなる
プラセボ群と同程度1.0%-3.4%(プラセボ群と同程度)運転技能の低下が認められなかった※傾眠の傾向があるため添付文書には注意喚起あり
ベルソムラスボレキサント10mg:¥69.3
15㎎:¥90.8
20㎎:¥109.9
就寝直前 1日1回20㎎(効果不十分でも増量不可)t1/2=12h(消失半減期15-22時間)
onset=30分
CYP3Aを強く阻害する薬剤と併用禁忌半錠「不可」:割線なし
粉砕「不可」:吸湿性が高い
一包化「不可」:無包装状態で1日で外観変化が認められる
経管投与「不可」:経管投与ハンドブックより
室温1.2%-1.7%持越し効果、筋弛緩作用等の発現に注意3.0%-15%(プラセボ群と同程度)運転技能の低下あり
クービビックダリドレキサント塩酸塩25㎎錠:¥57.3
50㎎錠:¥90.8
就寝直前 1日1回50㎎(効果不十分でも増量不可)t1/2=8h
onset=30-40分
・重度の肝障害のある患者
・CYP3Aを強く阻害する薬剤と併用禁忌
半錠「不可」:割線なし
粉砕「可」:1か月間安定
一包化「可」:無包装状態で3カ月安定
経管投与「可」:5分で崩壊し8Frのチューブを問題なく通過
室温0.6%-2.9%レム睡眠の時間が長くなる傾向(24%-27.1%)※平均20-25%
・レム睡眠出現時間が早くなる
プラセボ群と同程度※エプワース眠気尺度、WAIS-IV知能検査0.3%-1.8%(プラセボ群と同程度)※夜間の転倒はなし運転技能の低下あり※運転技能の低下が認められたのは単回投与の時で、4日連続投与後は低下が認められなかった。

クービビックは半減期が短くすることで翌日の持ち越し効果を抑えることが期待されていますが、デエビゴと比べて今のところ差がなさそうです。ベルソムラとクービビックはCYP3Aを強く阻害する薬とは併用禁忌のためそもそも使用しにくいです。また、デエビゴは効果が不十分の場合は増量できるので患者の状態の合わせて用量調整ができますがクービビックは増量できないのもデメリットです。

オレキシン受容体拮抗薬はどう使い分ける?各国のガイドラインではどうなっているか?

ヨーロッパではオレキシン受容体拮抗薬はデエビゴ、ベルソムラは販売されておらず、クービビックのみ販売されているようです。よってオレキシン受容体拮抗薬の使い分けの記載は欧州ガイドラインにはありませんでした。

アメリカのガイドライン(https://emedicine.medscape.com/article/1187829-treatment#d10)では睡眠の維持にベルソムラが推奨され、入眠困難に対してはそもそもオレキシン受容体は推奨されていません。

日本のガイドライン「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」では睡眠衛生指導のみでは改善が難しいと判断される場合の不眠症に対しては薬物療法が第一選択となっています。薬の選択に関しては「不眠症のタイプや患者の背景を考慮して選択される」とあります。

さらに、「今日の診療」での不眠症に治療については、
〇 入眠困難が主体の場合→ 「デエビゴ」(その他にルネスタやロゼレムが推奨)が推奨
〇 中途覚醒や早朝覚醒が主体の場合→ 「ベルソムラ」が推奨
となっています。

クービビックは日本で販売されたばかりですので日本のガイドラインや書籍には記載がありませんが、半減期が短いことから入眠困難が主体の患者が対象と考えられます。(中途覚醒にも効果があることは証明されています)

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著者の感想

クービビックはデエビゴと効果や安全面でほぼ変わらないというのが結論です。
※2023年にクービビックとデエビゴを比較した論文(2023 Oct 2;84(6):23m14851. doi: 10.4088/JCP.23m14851)があり有効性はデエビゴが優位で安全性はクービビックが優位との結果ですが、RCTでの直接比較ではないので参考程度と解釈しています。

使い分けるとしたら、クービビックはデエビゴに比べて禁忌が多く、また効果不十分でも増量できないという欠点がクービビックにはありますので不眠症の患者にはまずはデエビゴを検討するのがよいと思います。

デエビゴを使ってみて、翌日の持ち越し効果が強く出たり、悪夢をよく見るという場合にはクービビックを検討してみてもいいかもしれません。

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