2020年度の診療報酬改定の中でオンライン診療の算定基準がどのようになるのか医療者の一人としてとても気になっています。
私自身は、オンライン診療はとても有用な手段であると考えていますので、広く利用されることを願う一方で、医療ミスや誤診のリスクのようなデメリットもあることを認識しています。
2018年の診療報酬改定でオンライン診療が認められていますが、その算定には厳しい条件があり、この2年間でオンライン診療がほとんど普及していない現状があります。(2018年7月時点で全医療機関の1%未満)
条件が厳しい課した理由はやはり新しい試みであることから国が慎重な姿勢を取っていることが一因ではありますが、現場感覚として「厳しすぎる」という印象があります。
2019年6月に開かれた中央社会保険医療協議会総会において全国健康保険協会理事・ 健康保険組合連合会理事・ 経団連社会保障委員会医療・介護改革部会部会長代理らも「オンライン診療は対面診療の補完的手段と前提はあるが、現行の条件は厳しすぎた」との旨の発言をされています。
また、医師向けにオンライン診療の印象などをアンケートした結果、厳しすぎる条件の中には無意味なものもあると考えられます。
目次・・・
オンライン診療の適切な実施に関する指針では規制緩和に動いている
オンライン診療をする上での指針が厚労省で検討されています。これはオンライン診療をする上でのガイドラインのようなもので、2020年度の診療報酬改定ではこの指針に沿った改定が行われると言われています。
この指針において、初診からオンライン診療を可能とする疾患が増えるなど規制緩和に方向で検討されており、今後の診療報酬改定で厳しい条件は緩和されるものと予想されます。
今後、オンライン診療が普及するのに必要な規制緩和
オンライン診療はアメリカでは病院にかかる手段の一つとして一般的なものとなっています。日本においてもオンライン診療が普及するのに足枷となっているのは規制の厳しさです。
必要な規制であればいいのですが、不必要に厳しくしているものと思われるものを二つ紹介します。
オンライン診療で診ることができる疾患の限定
現在の保険診療でオンラインで診療が許可されている疾患は生活習慣病や小児の重症な疾患(軽症はだめ)に限られています。
これらの疾患は病院に来なければできない検査などがほとんどなく、目視などである程度状態を確認できる病気です。さらに、長期間通院しなければならないことが多いことが、オンラインでの診療の要望が多い理由です。
ですので、これらの疾患にも適応拡大が期待されます。
最初の半年間は通院しなければならず、そのあとも3ケ月に一度は病院に行かなければならない
現行のオンライン診療でも生活習慣病などの一部の疾患は許可されていますが、結局は何度も病院に行かなけらばならないという条件があります。
オンライン診療の大きなメリットは通院負担の軽減です。ですが現状は定期的(というかかなりの頻度で)通院しなければなりません。それならオンライン診療で診てもらうより近くのクリニックに行くとなってしまいます。
血液検査は尿検査などはさすがにオンライン上ではできませんので、そのようなどうしても来院しなければならない事情がない限りは病院に通院する必要はないとしてもいいのではないかと思います。
まとめ
- 疾患の限定
- 対面診療の義務
この二つの条件がある限りはオンライン診療は普及しないと思います。
自分で置き換えた場合、現状のオンライン診療を利用するかと考えたら、答えは「NO」です。
オンライン診療は仕事を休んで病院に行く手間を省けるということが、最大のメリットです。現状ではメリットが実感できません。
私は花粉症なので1月くらいから近所の耳鼻科に行って花粉症の薬を処方してもらうのですが、最初にいつも1か月分の薬が出ます。ですが5月くらいまでは花粉症の症状が続くので1か月に一回その病院に行くのですが、診察はとても簡単なもので「どうですか?症状まだ出てますか?薬効いてますか?」と同じ質問をされて終わりです。
これならテレビ電話でいいでしょ?っていつも思います。
ここまで規制を厳しくする理由は本当にありません。オンラインという手段を医師それぞれが「適合できると判断した患者・疾患」にオンラインで診療すればいいだけです。来院も必要と判断した患者にだけ来院してもらえばいいだけの話です。
オンライン診療が適しているかどうかを素人が判断するわけではないのです。医師が判断しているのです。なぜ国が規制したがるのか理解できません。(高額な薬を規制するのはわかりますが、オンライン診療が増えると医療費を切迫するということもないですし)
花粉症くらいならオンラインで診察してくれる病院があればそっちで診てもらいたいと思いますし、そう考えている人も多いのではないでしょうか?