「薬剤が追加になったけどルートがこれ以上取れない」「この薬って側管投与できたかな?」
「病棟で問題となりそうな配合変化」や「覚えておいた方がよい」薬剤の配合の組み合わせをクイズ形式でお届けします。
この記事では「医療薬学会薬物療法専門薬剤師」の監修の上で作成されております。
「ソリターT3」と「ヘパリン」は配合変化を起こす?側管から投与できる?
正解は
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「ヘパリン」も「ソリターT3」も持続で投与することが多いため点滴ルートを占有することが多い薬剤です。
そのため、側管から同時に投与出来るのか?と思って調べた事はある人も多いと思います。(実際に私が所属しているDI室によく問い合わせが来ます)
そこで製薬メーカーの配合変化表を確認すると「ヘパリンとソリターT3は配合変化なし」と解釈できそうです。

参考:ソリターT3号輸液 配合変化表より
製薬メーカのデータを見る限り配合変化は問題ないように見えます。
ですが、実はソリターT3と配合するとヘパリンの活性がかなり低下することが報告されています。
ソリターT3との配合でどれくらいヘパリンの活性は低下する?
ヘパリンの含量低下について参考となる論文を紹介します。
ソリターT3号とヘパリンの混合後、3分後にはヘパリンの活性が約25%低下した。
参考:薬局, 28,359-362(1977)
ヘパリンの活性が低下する理由は、輸液内のブドウ糖や乳酸の影響を受けていると考えられています。
ブドウ糖または乳酸を含む輸液中で、ヘパリンの活性が急速に(最初の1時間で)低下する
参考文献:J. clin. Path., 1973, 26, 742-746
この論文ではブドウ糖及び乳酸を含む輸液にヘパリンを混合することで約1時間後にはヘパリン活性が半分になっていることを示しています。
【データ表】
輸液の種類 | 0時間後 | 1時間後 | 4時間後 | 8時間後 | 24時間後 |
生理食塩液 (0.9% NaCl) | 100% | 100% | 100% | 100% | 100% |
5%ブドウ糖液 (Dextrose 5%) | 約45% | 約45% | 約45% | 約45% | 約45% |
ブドウ糖加食塩液 (Dextrose 4.3% with NaCl 0.18%) | 100% | 約55% | 約55% | 約55% | 約55% |
乳酸リンゲル液 (Hartmann’s solution) | 100% | 約60% | 約60% | 約60% | 約60% |
1/6M 乳酸ナトリウム液 (Sodium lactate 1/6 M) | 約50% | 約50% | 約50% | 約50% | 約50% |
乳酸とブドウ糖を含む輸液が乳酸リンゲル液をはじめたくさんありますが、それらの輸液のほとんどはヘパリンとの配合データにおいて、ヘパリン活性は評価しておらず、外観変化・pHを見ているだけです。
ラクテック注の配合変化表

ですので、乳酸・ブドウ糖を含む輸液とヘパリンを混合・側管投与はできれば避けるのがベターです。
どうしても側管投与をしなければならない場合はヘパリンの活性が低下する可能性を考慮した上で投与するようにしてください。
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