注射薬の配合変化の原因の1つに「pHの変動」があります。一定pHを超える(限界pH)と溶解度を超えて白濁を引き起こすこと知られています。
インタビューフォームを確認すると「pH変動試験(変動スケール)」のデータを載せているので、これを見れば限界pHはわかるのですが、「薬剤同士を混合した後のpHがわからない」ので、pH変動試験のデータをどう利用すればよいかわからないという人がいます。
本記事では、「pH変動スケールを使う場面と使い方」ついてわかりやすく解説します。(「pH変動ツール」を使って解説するので難しい計算は使用しません)
pH変動スケール(pH変動試験)結果の見方・考え方
薬剤のインタビューフォームを見るとpH変動試験の結果が載っていることが多いです。

例えば上記はドルミカムのpH変動試験の結果で、pHは4.55よりアルカリ側に傾くと白濁するというものです。
では、例えば「pH6.0-7.5のラクテック注」と配合すると白濁するのかというと白濁しません。
理由は、希釈されることでpHは変化しますが、変化量はそれぞれの緩衝能(今回はラクテックとドルミカムのそれぞれの緩衝能と配合量) に応じて変化することと、白濁する限界pHは希釈により変化するためです。
この緩衝能を考慮した混合後のpHの予測は複雑な計算が必要ですし、限界pHがどれくらい移動するかも考慮する必要があるので、実際はpH変動シミュレータを使用することをおすすめします。
pH変動シミュレータの使い方
pH変動ツール使い方の動画になります。ツールの起動は「pH変動シュミレータ」をクリックしてください。
① 薬剤名を検索
※このツールはpH変動試験の結果から薬剤毎の緩衝能を簡易的にしているのでpH変動試験の結果がわかる薬剤のみが対象です。現時点で約500種類の薬剤が登録されております。
② 「配合液量 (mL)」の箇所に実際に配合する注射薬や輸液の液量を入力
③ 予測pHと配合可否の判定が自動で表示される
このスケールを見ることで、「あとどれくらい配合量が変われば危険域に達するのか」といった余白も直感的に把握することが可能になります。
pH変動シミュレータを使用するおすすめの具体例
このツールを使うのは「pHの変動で白濁することが知られている薬剤」を混合する場合で、 特に以下の2通りです。
① 配合変化データない場合
例えば、ドルミカム注はpHがアルカリになると白濁することが知られていますが、ソルデム1のルートの側管から投与するという指示の時に、配合変化データを調べると、
「ドルミカム+ソルデム3A → 配合OK」
というデータしかない場合です。(ソルデム1とのデータはない)
ソルデム1とソルデム3Aは電解質の組成の違いがありますが、ドルミカムと配合変化を起こすとしたら、pHがドルミカムの限界pHを超えた場合と推測できるのでドルミカムとソルデム1とのpHをシミュレーターを使って予測することで投与の可否を判定できます。
② 配合変化データはあるが配合条件が合わない場合
例えば、ラシックスを「希釈なし」でドルミカムを投与している側管から投与するという指示の時に、配合変化データを確認すると、
「ドルミカム+ラシックス+生食500mL → 配合OK」
というデータしかない場面です。ラシックスもドルミカムもpHの変動で白濁するので生食で希釈しないとどうなるかシミュレーションが必須となります。
pH変動シミュレータの正確性の検証結果
このシミュレータの予測精度は様々な薬剤で検証しております。
今回は「フロセミド注20mg」を用いたときの検証のデータをご紹介します。
| ベース輸液 / 配合薬剤 | pH実測値 | pH予測値 |
|---|---|---|
| ラクテック500mL + フロセミド20mg | 6.42 | 6.67 |
| ポタコールR500mL + フロセミド20mg | 4.87 | 4.91 |
| ブドウ糖注射液 5% 500mL + フロセミド20mg | 5.54 | 5.82 |
| ハイカリック液-1号 700mL + フロセミド20mg | 4.42 | 4.10 |
| アミノレバン点滴静注 500mL + フロセミド20mg | 5.93 | 5.90 |
| ビーフリード輸液 500mL + フロセミド20mg | 6.73 | 6.73 |
| ドパミン塩酸塩点滴静注 + フロセミド20mg + 生食100mL | 5.39 | 5.24 |
| ミノサイクリン塩酸塩点滴静注用100mg + フロセミド20mg + 生食100mL | 3.26 | 5.09 |
| メロペン点滴用バイアル 0.5g + フロセミド20mg + 生食100mL | 7.90 | 7.90 |
| セフトリアキソンNa静注用1g + フロセミド20mg + 生食100mL | 6.54 | 5.66 |
一部の複雑な組み合わせにおいて乖離が見られるものの、多くの輸液や注射薬において、実測値と予測値が非常に近い値を示していることが分かります。
まとめ
注射薬の配合変化を防ぐためには、「pH変動スケール」を活用し、希釈による限界pHの移動と混合後の正確なpH変動を予測することが極めて重要です。
勘や過去の経験則だけに頼るのではなく、高度な計算ロジックに基づいたシミュレーションツールを導入することで、医療現場における調剤・投与の安全性をさらに高めることができるでしょう。
配合変化のデータは膨大で調べるのは大変だと思います。
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